ブランディング

なぜ公式サイトに、名画のパロディを載せたのか。

ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』のパロディ。BIG LOVEと書かれた旗を掲げる旗手を先頭に、メガホン・スマホ・ラップトップを持った群衆が続く

このサイト、10月30日に一度作り直したばかりなんです。

それを、翌日にはまた作り直しました。

「リデザインしておいて早速なんなん?て感じだと思うんだけど。。笑」

自分でもそう思います。
でも、今のトップページを見てもらえればわかります。これは思いつきじゃなくて、作り直す理由があったんです。

フレスコ画は、その時代の広告だった

きっかけは、「教会に飾られているフレスコ画っぽいタッチで、現代マーケティングの風刺画をふんだんに入れていきたい」と思いついたことでした。「サイトデザイン自体も変えちゃうのは全然構わない」とも。

教会のフレスコ画って、もともとは宗教画です。
でも同時に、字を読めない人が多かった時代の「広告」でもありました。壁いっぱいの絵で物語を見せて、信じさせて、動かす。説教を一度聞いただけでは覚えられなくても、毎週見る壁の絵は忘れません。

僕たちが掲げているコピーは「群衆を集め、群衆を動かす。」です。

フレスコ画がやっていたことと、やりたいことが同じでした。だから、このサイトの顔を名画のパロディにしました。

トップ:旗を持って先頭を走る

ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』のパロディ。BIG LOVEと書かれた旗を掲げる旗手を先頭に、メガホン・スマホ・ラップトップを持った群衆が続く

ファーストビューは、ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』(1830年、ルーヴル美術館所蔵)のパロディです。1830年の七月革命を描いた油絵で、フレスコ画ではありません。フレスコ画のタッチでも試し描きしましたが、最終的には原画を生かした油絵のまま採用しました。

サイトを一緒に作っているAIに、こう頼みました。「ドラクロワの旗を掲げている絵があるでしょ?あれのパロディとかファーストビューにどうかな?僕の顔にして」

原画は、旗を掲げる女神が先頭に立ち、銃や剣を持った民衆が後ろから押し寄せてくる構図です。手前には、倒れた人々が描かれています。

旗手の顔は僕にしました。手に持っているのは、旗と、左の脇に抱えた閉じたラップトップだけです。メガホンを掲げているのは左端の男、スマホを掲げているのは右の少年と後ろに続く群衆、開いたラップトップを抱えているのはシルクハットの男。民衆が手にしていた銃や剣を、1人ずつ仕事道具に置き換えました。

足元には、丸めた広告チラシ、リングライト、絡まった充電ケーブル、空のギフトボックスを置いて、古いマーケティングの残骸を踏み越えて進むイメージにしています。旗手の足元には、原画のとおり、青い服に赤い帯をまとった人物が倒れたまま見上げる姿も残っています。

旗には「BIG LOVE」の文字を赤で入れました。試作の段階では「悪目立ちしてるかな?」と少し小さくしてみたりもしましたが、最終的には、旗の真ん中でそのまま読める大きさに落ち着かせました。隠す言葉じゃないので。

この「BIG LOVE」という言葉を言い出したのは、Pete Hellerが1999年に出した「Big Love」という曲からです。

Stargardが1979年に出したガラージ・ディスコの名曲「Wear It Out」(僕もこの曲が大好きです)をサンプリングしてループさせた、高揚感のある夢見心地のハウス。この曲がかかると、フロアが多幸感に包まれる、ピークタイム向けの傑作でした。

このポジティブなエネルギーでみんなを包めるといいな、という思いでBIG LOVEと言っています。

顔の描き方も直しています。「くっきりしすぎ」ていたので、「よく見ると、あ、これヒナタ?ってくらいの感じで良い」に。塗りの感じがAIだとなかなか難しくて、「フェルメールくらい綺麗な感じ」「陰影を丁寧に描く感じ」と、何度も描き直しました。それっぽいけどなんかバランス悪いなぁと思ったら、体の比率が「5.5頭身くらいしかない」と気づいて、「いや、もっと足を長く。。」と何度も直しました。AIは嘘が嫌いなのか、なかなか素直に足を伸ばしてくれなかったです。。笑

この絵を選んだのには、顔を出す以外の理由もあります。もともと、ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』が好きな絵でした。Dragon Ashというバンドの『Viva La Revolution』というアルバム(懐かしい…)のジャケットが、この絵のオマージュというか、パロディというかをやっていて、いつか絶対オレもやりたい!と思っていたんです。それが、数十年経って叶えられた感じがします。笑

好きな絵だったことに加えて、僕はふだんから「旗を立てろ」と言っています。旗とは、何のために・誰と・どこへ向かうのか、なぜあなたなのかを、先に掲げること。個人の事業構築でも、企業のブランディングでも、最初にやるのはいつもここです。旗を立てて、「一緒に行こう」と言うこと。それが一番大事だと思っています。だから、旗を掲げて先頭を走る絵を選びました。

僕は、上から号令をかける人ではありません。先頭に立って、一緒に走る人でいたいんです。

Services:専門が1か所に集まる場所

ラファエロ『アテネの学堂』のパロディ。哲学者たちがラップトップやスマホを手にして議論している

サービス紹介のページは、ラファエロの『アテネの学堂』(1509〜1511年ごろ、バチカン宮殿「署名の間」のフレスコ画)です。

原画は、哲学者や数学者や天文学者が、専門ごとに集まって議論している絵です。AI・ブランディング・ディレクション・デザイン・ライティング・マーケティング・企画。うちのサービスも、専門ごとの仕事が1つの場所に集まっています。構図がそのまま重なりました。

中央で天を指すプラトンの隣、地面に手のひらを向けているのがアリストテレスです。

哲学者の列に、しかもアリストテレス大先生に変わって自分の顔を差し込むなんて、烏滸がましいにも程があるんですが(笑)、これにも理由があります。AIに「アリストテレスのところを僕に差し替えてもらえるといいかも!」と伝えました。アリストテレスの顔は僕に差し替わり、小脇には閉じたラップトップを抱えています。

理想を指すプラトンに対して、アリストテレスは現実・地に足のついたことを表すとされています。戦略を現場で形にする、僕たちの立ち位置と同じでした。

絵の中には、ほかにも名前の知られた哲学者がいます。ラップトップに書き込んでいるのはピタゴラス。「万物は数である」と説いた数学者です。スマホを退屈そうに眺めているのはヘラクレイトス。「同じ川に二度入ることはできない」、すべては変わり続けると説きました。階段に寝そべってスマホを顔の上に掲げているのはディオゲネス。財産も欲も手放した生き方を説いた犬儒派(キュニコス派)の哲学者です。黒板にファネルの図を描いているのはユークリッド。幾何学の基礎を作った人です。

Works:何もないところから形が生まれる瞬間

ミケランジェロ『アダムの創造』のパロディ。神とアダムの指先が触れ合う寸前の構図

実績ページは、ミケランジェロの『アダムの創造』(システィーナ礼拝堂天井画、1511〜1512年ごろ)です。

最初はブリューゲルの『バベルの塔』をAIから提案されました。でも、AIに「バベルの塔は『完成しなかった』んだよね?それって、このページとは逆の意味になっちゃわない?」と伝えて見送り、「アダムの創造はどうだろ?」と提案しました。

何もないところから形が生まれる瞬間。依頼を形にしてきた実績のページにぴったりでした。

指先のすき間には、手を入れていません。この絵でいちばん有名な部分だから、いじると元の絵だと気づいてもらえなくなるからです。

一度、AIに「神様の顔を僕にして、アダムの手を握るのはどうか…一緒に上がって行こうってメッセージにならないかな」と相談しました。でも、神は空に浮かび、アダムは地面に寝ています。手を握っても、上から引き上げる構図に見えてしまう。AIの説明の方が筋が通っていたので、素直に従いました。このページでは僕の顔を出さず、天使たちが主役です。

Journal:手で書くという場所

カラヴァッジョ『書斎の聖ヒエロニムス』のパロディ。机の頭蓋骨の位置に、画面の消えたノートパソコンが置かれている

Journalのトップに使っているのは、カラヴァッジョの『書斎の聖ヒエロニムス』(1605〜1606年、ボルゲーゼ美術館所蔵)です。

原画の机には、頭蓋骨が置かれています。死を思え、という警告の意味を持つものだそうです。パロディでは、その場所に、画面の消えたノートパソコンを置きました。眠ったまま、光も文字も映していません。

聖ヒエロニムスは、それでも手を止めず、ペンで書き続けています。

頭蓋骨が「いつか終わる、だから今を本気で生きろ」と告げていたのだとしたら、眠ったままのラップトップは「本気の言葉は、画面の中からは出てこない」と告げているんじゃないか。今の僕は、そう読んでいます。

笑うのは、仕組みのおかしさまで

トップ・Services・Works・Journal、パロディにした4枚の絵が笑っているのは、仕組みのおかしさです。

バズ狙いの煽り、中身のない数字集め、作っては捨てる広告。そこまでは笑います。実在の人や会社、一人で頑張っている個人事業主のことは笑いません。昔から人を動かす仕組みは変わっていない、という話として描いています。

ここで説明したのは、絵の中のごく一部です。4枚のそこかしこに、令和のアイテムやマーケティングの風刺がまだ隠れています。ウォーリーを探せとか間違い探しみたいに、見つけてみてください。

白と黒、太いゴシックだけにした理由

デザインは、白黒でそろえました。英数字はInter、日本語はNoto Sans JPのゴシックです。明朝体にすると、それっぽ過ぎるというか、絵の方が勝ちすぎて美術館そのものになってしまいます。古典の絵と、現代的で無機質なゴシックの差があるから、皮肉がちゃんと効きます。

フォントも、個性的なデザインフォントではなく、あえてユニバーサルなデザインのものを選びました。誰にでもすぐ読めて、わかりやすく伝わること。削るところを削った、引き算とバランスの美しさ。そのふたつに惹かれたからです。

コピーの置き方も、「でっかい声で言うんじゃなくって、淡々と伝える感じ」にしました。

絵とこのシンプルなフォントが組み合わさった画面を見て、素直にうれしくなりました。めっちゃかっこいい!すごくお気に入りです。

一から描かせると失敗した

4枚とも、最初から「〇〇風に描いて」とAIに頼んでも、うまくいきませんでした。塗りが粗く、賑やかになって、AI感満載で、名画の静けさが消えてしまうんです。うまくいったのは、原画そのものを渡して「ここだけ変えて」と頼んだときでした。塗りも光も、名画のまま残ります。

だから、本当に人を動かすには

フレスコ画の時代も、SNSの時代も、人を動かす仕組みの土台は変わっていません。物語を見せて、信じてもらって、動かす。

仕組みがどれだけ変わっても、仕組みだけで人は最後まで動きません。厳しいことを言うときも、最後は味方でいる。旗に書いた「BIG LOVE」は、そのためのものです。

トップページのコピーには、こう書きました。「さざなみを、うねりに変える。群衆を集め、群衆を動かす。」

まずはさざなみを起こして、それをうねりに変えていく。群衆を集め、群衆を動かす。これはSTRATEGIC MARKETING and SALESの軸となるコンセプトです。その先頭が、あなたであってほしい。僕も一緒に走っていきます。

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